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神戸地方裁判所 昭和49年(む)684号 決定 1974年12月04日

主文

原決定を取消す。

本件勾留請求を却下する。

理由

一  本件準抗告の申立の趣旨および理由は、弁護人提出の「準抗告の申立」と題する書面記載のとおりであるから、これを引用するが、所論は要するに、本件被疑事実は昭和四九年一〇月中に発覚していたものであるから、捜査当局は、別件で同年一〇月一二日から引きつづき逮捕勾留されていた被疑者を本件で取調べることは十分可能であったにもかかわらず、被疑者が同年一一月二日右別件で起訴され、同月二九日保釈されると同時に、本件についての逮捕状を執行しているが、このような捜査はすでに発覚している数個の犯罪事実につきことさら順次逮捕、勾留をくり返すものであるから、本件逮捕は違法であり、従って右逮捕にもとづく本件勾留も違法なものであるから、その取消し並びに本件勾留請求の却下を求めるというのである。

二  当裁判所の判断

一件記録並びに事実取調の結果によれば、被疑者は昭和四九年一〇月一二日銃砲刀剣類所持等取締法違反の嫌疑で現行犯逮捕され引きつづき、兵庫県生田警察署代用監獄に勾留され、一〇日間の勾留延長を経て同年一一月二日起訴され、その後も勾留されたままであったが、同月二九日保釈されたものの即日本件被疑事実につき生田警察署警察官から逮捕状の執行を受けたことが明らかである。また本件被疑事実は、共犯者近藤俊介が同年一〇月二八日右被疑事実につき生田警察署警察官に自白し、被疑者との共謀も認めているのであるから、おそくとも右時点において生田警察署の捜査官に発覚していたことも明らかである。

ところが同一被疑者に対し発覚している数個の犯罪事実につき、ことさらに順次逮捕勾留をくり返すことは不当に被疑者の人権を侵害するおそれが大であり、とくにやむを得ない場合を除いては許されないものというべきである。(福岡高決昭和四二年三月二四日、高裁判例集第二〇巻二号一一四頁参照)

本件において、さきに認定した捜査の経過に徴して検討するに、昭和四九年一〇月二九日から被疑者が別件で保釈されるまでの間、本件について被疑者の取調を含め充分な捜査をなさなかったことにつき、やむを得ない事情があったとは認め難く、かえって生田警察署の捜査官は、おそくとも同年一〇月二八日には本件被疑事実を認知しているにもかかわらず事実取調の結果から明らかなように生田警察署司法警察員は同年一一月二六日、被疑者を別件の兇器準備集合罪の被疑事実で神戸地方検察庁検察官に追送致した際余罪なしと報告しているほどであるから右時点において捜査官は爾後被疑者につき本件の強制捜査をする意思がなかったのではないかと疑われるしかるに被疑者が同月二九日保釈されるとみるやにわかに本件で逮捕状を請求してその執行するが如きは不当に被疑者の身柄拘束を継続する意図に出たものとの疑いを抱かざるを得ない以上により被疑者に対する一連の捜査に徴すると、本件逮捕は違法なものといわざるを得ずしたがって右逮捕にもとづく本件勾留請求ひいては勾留も違法なものといわざるを得ない。

三  よって本件準抗告は理由があるので刑事訴訟法四三二条、四二六条二項により主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 山本久巳 裁判官 川上美明 森本翅充)

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